饅頭発祥の地とは?

2010 年 7 月 7 日

(湛)

「さあて、大博通り周辺で聖福寺・東長寺と共に欠くことが出来ない寺院といえば、あとは承天寺ですね?」

(室)

「うむ。承天寺を開山した聖一国師は臨済宗の高僧で、栄西禅師と同様に中国大陸(宋)に渡って禅を学び、帰国後に博多に承天寺を開いたのだ。」

(湛)

「承天寺の建立には、有力武将や貿易商からの寄付があったとか?」

(室)

「左様。例えば、寺院建設に必要な資材を提供したのは博多在住の豪商・謝国明殿だという。」

(湛)

「謝国明殿といえば、以前大河ドラマの『北条時宗』に出ていたあの妖しい貿易商ですね?」

(室)

「これこれ。それは余りにも失礼であろう。謝国明殿は博多の発展にも寄与した我等博多商人の偉大な先人じゃぞ。」

(湛)

「だって、一族郎党が全員大陸風の衣装に身を包んでいて、雑技団みたいな武術を使うし、おまけに親友が松浦党の海賊ですよ。妖しくない訳ないじゃないですか!」

(室)

「・・・・。まあ良い。それから、承天寺の敷地を提供したのは大宰府の武官であり、鎌倉幕府の有力御家人でもあった武藤資頼公。」

(湛)

「武藤資頼公は鎌倉時代後期のモンゴル軍来襲の折に、九州の武士団の指揮をとった少弐資能公の父ですね?」

(室)

「その通り。資能公の代になって官職である『太宰少弐』から『少弐』氏を名乗るようになったが、当時の武藤(少弐)氏の勢力は強く、豊前国・筑前国・肥前国・壱岐国・対馬国を守護として支配していたのだ。」

(湛)

「事実上の博多の庇護者だった訳ですね。」

(室)

「左様。このことだけ見ても、承天寺の格の高さが分かるというもの。」

  • * *

(湛)

「さて、着きましたよ。」

(室)

「この門には菊の御紋がある。かつては官寺であっただけあって、勅使(天皇の使者)を通す為の勅使門がある。聖福寺の時のように勅使門に近付くでないぞ。宗湛、分かったか?」

(湛)

「は~い。おや、『饅頭素麺発祥の地(まんじゅうそうめんはっしょうのち)』とは何でしょう?」

(室)

「承天寺の開祖である聖一国師は、大陸に渡って禅の教えを学んだ一方で、まんじゅう・そうめんの製法を身に付けて帰国したのだ。」

(湛)

「なるほど。それで、まんじゅうとそうめんの製法を持ち帰ったこの博多の町に『饅頭素麺発祥の地』という石碑があるのですね。」

(室)

「うむ、没後に花園天皇より贈られた『聖一』の国師号もそういった仏教以外の功績を含めたものかも知れぬな。」

(湛)

「敷地内を見回すと、鐘楼や金堂をはじめ、いかにも禅寺らしい崇高で落ち着いた雰囲気の建物が並んでいますね。」

(室)

「最盛期と比較すればその後の戦乱で著しく規模が縮小し、戦後の区画整理で敷地内に道路が通ってしまっているが、それでも往時の雰囲気を充分に残しているな。」

(湛)

「叔父さん、この石の塊は何ですか?」

(室)

「これは、鎌倉時代に博多に来襲したモンゴル軍(元寇)が使用していた軍艦の石製の錨だな。」

(湛)

「これが、かつてユーラシア大陸全土に猛威を振るったモンゴル軍の軍艦の一部なのですね。あの時は叔父さんも大変だったでしょう?」

(室)

「うんうん、あの時は現金と小さくて高価な物を身に付けて家族や使用人と博多から肥後の菊池へ避難を・・・・。って、私が生まれたのは元寇の200年以上後だっ!」

(湛)

「へへ、冗談ですよ。」

(室)

「全く、叔父を年寄り扱いしおって!」

(湛)

「話は変わりますが、博多山笠の源流も承天寺と聖一国師だとか?」

(室)

「左様。1241年に博多の町で疫病が流行した際に、聖一国師が病魔退散の為に輿に乗って街を清めて巡ったのが由来だと言われている。」

(湛)

「それにしても、本当に承天寺は興味深い寺院ですね。鎌倉時代の大大名である少弐氏や豪商・謝国明殿の援助で建てられ、勅使門を有するような格式の高い寺院でありながら、人々の生活に根付いた饅頭や素麺、おまけに博多山笠の発祥に地でもあるなんて。政治と風俗という一見相反するものの歴史を一度に垣間見られますね。」

(室)

「ところで宗湛よ。せっかく饅頭発祥の地に来たのだから、どこかで美味い饅頭でも買って帰るか?」

(湛)

「いやだなあ、叔父さん。先程お昼を食べたばかりなのに・・・・。あまり間食ばかりしていると、メタボになっちゃいますよ!ボクは叔父さんの健康を本当に心配しているんですから。」

(室)

「(ムカッ)そうかそうか。それ程私の健康が心配ならば、大博通りの北端から南端までランニングで往復10周するか?」

(湛)

「・・・・。さあて、美味しいお饅頭屋さんはどこかな?あ、ケーキ屋さんでもいいな!」

(室)

「調子のいいヤツだ!」

[続く]